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ヒストリー

たまり場から生まれる絆が、震災復興の活性源に。

月刊「信用金庫」(2011年9月号)より([PDF版]

コミュニティスペース「ファイブブリッジ」が、地域で果たしている役割とは

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ファイブブリッジの会議・交流サロン。ここに様々な価値観の人々が集う。

宮城県仙台市に拠点を置き活動を続ける、NPO法人ファイブブリッジ。大人のための交流部室としての機能を果たしてきた。ここでは、震災後も変わらず、むしろ活発に多業種交流や情報交換の場がもたされた。ファイブブリッジの会議・交流サロンには、生活復旧のためのボランティアスタッフの拠点としても活用された。また、より津波被害の甚大な地域への支援をしたいと、経済的復興を目指す多くのプロジェクトが生まれるベースキャンプとなった。これまで5年にわたり築き上げられてきた、ファイブブリッジという「たまり場」に集まる人と人のネットワークが、未曾有の震災を前にして強く結びつき、広がりを持ち続けている。3月11日に発生した東日本大震災発生以降、こうした地域のコミュニティースペースに集まる仲間のネットワークが、震災復興支援の大きなパワーにつながっている事例と、その存在意義をこの場で多くの人々に伝えることで、読者の皆さまの地域の防災・コミュニティー・産業経済活性化の一助となれればと思い、次に報告していきたい。

被災地の現場の様子と仲間の活動(ファイブブリッジメンバーの行動から)

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震災直後、今は仕事にならないと、避難所で炊き出し支援を行う仲間たち

甚大な被害を受けたこの広い地域を、「被災地」と一言で表すことはかなり難しい。大きく分けて5つの「被災地」があるように思える。それは、【1】津波による被災地【2】地震による被災地【3】原発による被災地【4】風評被害による被災地【5】副次的要因による被災地だ。その中で、ファイブブリッジに震災後集ったメンバーの行動から、被災地の現場の様子について報告したい。

時間の経過とともに生活環境も人々の意識も変わっていった。震災後1週間は、避難所生活や自宅待機を余儀なくされ、生活に対する不安を持つ人々が多くいた。2週間目に入り、水道や電気が復旧した地域が増え、早くもファイブブリッジに人が集い、安否確認・生活状況報告とともに、今後に向けた活動のための情報交換を行われていった。 通常の仕事がなくなり、時間が空いてしまった仲間は、自分の生活よりもむしろ津波による被害を受けた地域に飛び出し、炊き出し支援、物資提供支援に日々を費やす人も多くいた。3週間目、3月末となると、事業者などは、現金回収や仕事創出のために苦労している姿が、ファイブブリッジのメーリングリストでも垣間見られた。1ヵ月が経ち、都市ガスも復旧し始めた頃、仙台市内はようやく平時を装うことができるようになった。

震災直後、被災地の現場では、より身近な情報を人は欲するということにあらためて気づかされた。また、信頼性の高い地域情報を得るためには、常日頃からの仲間とのコミュニケーションの重要性であることも実感した。誰でもいつでも入れる自由なたまり場機能としてのファイブブリッジがあることで、多くの情報が集まり、俯瞰して次なる一手を打つための共有知をスピード豊かに高めることができた。

被災地の復興に向けた産業プロジェクト創出(ファイブブリッジメンバーの行動から)

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※ブログ画面データ=3.11大震災SayYen!」プロジェクトでは、全国の賛同者に「応援買い」いただいた。

約1ヵ月間のファイブブリッジメンバーとの情報交換の中では、日々必要なものが浮き彫りとなっていった。津波・地震による被災地の生活復旧の点では、支援は国や行政や多くのボランティアに委ねられる。しかし、震災後の産業復興に向けたスピィーディーな支援が、個人事業主、中小企業向けには相当不足していることとの声が多く寄せられた。

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「東北にもう一度商店街のある街を。」とのメッセージを掲げ、宮城県石巻市との人のつながりを深める東京都大森のウィロード山王商店街

地震やで打撃を受けた、地域企業や小規模事業者は私たちの想像を超える数だった。とはいえ、NPO法人ファイブブリッジとしてまずできることといえば、これまでに築いてきた仲間の支援を優先することが必要だという結論になった。「津波によって会社や店舗・工場、住居も流出した多くの仲間のために何ができるか」、といったとてつもなく大きな課題は、被災地応援ファンドの活動につながってくるので後述する。今の今、私たちに求められていることは、津波や地震による被災が軽微だった企業の商品の売り上げ支援と販路開拓サポートだった。

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ざおうハーブの平間氏から、蔵王の地域について学ぶ「被災地応援ひとツーリズム」の参加者。

塩釜のはちやの餃子・蜂屋氏、亘理のみやぎのあられ石田氏は、商品の販売数量に応じて、避難所に商品を提供するチャリティーセットを作った。仙台市若林区の老舗染物店・永勘染工場の永野氏は、チャリティー前掛けを提案、各地域から各地域名入りの「復興前掛け」の注文が舞い込んだ。ファイブブリッジとしては、そうしたメンバーのアクションをサポートすべく、「3.11大震災SayYen!」プロジェクトとしてブログやメーリングリストで全国の仲間に応援要請をし、多くの支援者に被災地の商品購入を呼びかけた。

同時並行し、これも人のつながりの中からの紹介で、東京の大森商店街と三陸おさかな倶楽部のおさかな王子こと津田氏を中心とした、石巻との商店街連携が生まれた。大森商店街で復興支援イベントを行い、大森商店街の人々が石巻を訪れるなど、震災を契機に新しい絆が生まれている。この商店街連携の価値は、被災地の人々と地元商店街の周辺に住む人々と、宮城の商品を起点に新たな交流のきっかけを生み出せることだ。地元商店に被災地商品を卸すことで、地元商店にも収益が生まれ、周辺に住む東北・宮城に縁のある人々とのコミュニティースペースに育っていくことによる長いスパンの地域間交流に期待している。

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おさかな王子(三陸おさかな倶楽部・津田氏)、高知をゆく

この取り組みは、千葉県市川市のショッピングセンター・ニッケコルトンプラザ、奈良県天理市の天理大生との商店街連携、大阪の地域企業との連携、高知市の飲食店との交流連携、長崎や宮崎との商店街・ショッピングセンター連携に向けたパイロットケースと位置付けている。

また、蔵王・遠刈田温泉、鳴子温泉、秋保・作並温泉などの津波の被害をあまり受けなかった風評被害による温泉地や日本三景・松島の観光客の誘客は深刻だ。復旧隊による宿泊者はいるものの、これまで同様の観光客は見込めない。とはいえ、被災地の現場を物見遊山することなく、しっかりと現地の状況を学びとり、全国の地域に伝える情報発信者にはぜひ現場に足を踏み込んでもらいたい。私たちが提案したのは「被災地応援ひとツーリズム」というツアーで、震災地を応援し、地域の人の魅力を学ぶ新しい概念の旅なのだ。

現地の震災を体験したガイドがしっかりと被災地の現場を案内し、被災地周辺の企業の商品の魅力を紹介していくツアー。ファイブブリッジメンバーの生活の現場を巡るため、参加者同士のコミュニティー創出が深まるイベントだ。既存の観光の概念を変えるツアーとして、旅行エージェントの商品メニューのひとつとして提案している。こうした「被災地応援学び旅」を目的とする旅行会社も新しく生まれ、タイアップツアーを今後継続して行うことで、被災地での雇用創出の一翼を担っていきたい。

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「いぎなりがんばっぺ宮城」とのフレーズのMIYAGI AIDのチラシを手にする、宮城県白石市の竹鶏ファーム・志村氏と東京・昭和女子大の学生ボランティアさん

また、被災地エリア外に今回の震災体験を伝えていくアクションも複数生まれている。被災地外への被災体験者講師の派遣だ。5月末には前述の三陸おさかな倶楽部津田氏が高知新聞社からの招へいを受けた。約650人が参加したホールで、高知県知事や高知財界人のキーマン、高知新聞社社長コーディネートのもと、被災地の若者が現地の生の声を伝えている。被災地応援ひとツーリズム参加者から、被災地応援ファンドの参加事業者にも講師派遣要請があり、8月末に長野県長野市、松本市の2つの地域で、及善蒲鉾店(南三陸町志津川)の及川氏のセミナーが開催されるきっかけとなった。

さらに、これまでの人のつながりの中から生まれたイベントとしては、7月9・10日に東京銀座で行われた「MIYAGI AID」だ。東北・宮城の出身者のみならず、こよなく宮城を愛するボランティアスタッフが10代から40代まで2日間で延べ100人以上が集った。ファイブブリッジも共催し、宮城と東京に住む仲間が連携し開催した。「相手の顔が見えると支援はもっと楽しい」というコンセプトのもと宮城の商品の物販、現地の状況、事業のプレゼンテーション、商談の場を作った。こうした集いで、さらなる関係性、絆づくり、個人と個人のつながりの中からビジネスに派生することに期待している。

ファイブブリッジから生まれた、被災地応援ファンド設立までの経緯

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被災地応援ファンドのプロジェクトにつながった、ファイブブリッジの定期意見交換会(ビジネスセミナー・東北ビジネス未来塾)でのファンドについての熱い議論の様子

今回の震災による被害は甚大で、特に、宮城県内の沿岸部に多く立地している、食品関連企業についてはほとんどが全壊に近い被害を受けていることは震災直後より明白だった(もちろん、その中には、ファイブブリッジに集っていた仲間も少なくない)。どうしたら、それらの企業がもう一度立ち上がれるか考えた。なぜなら、それら地場の中小企業はみな、地域固有の資源を活用した事業を行ったり、地域に根ざした事業を展開したりするなど、地域の魅力を形づくってきた企業だからである。それら地場の中小企業がもう一度立ち上がることなくして、その地域の資源や文化を生かした産業を復興させることにはつながらない。

ただ、再建への道のりが難しいことも同時にわかっていた。たとえば、金融機関からの融資は、担保の保証問題(土地や建物、設備など、資産は津波で流されている)や二重ローン問題があり、国や県の助成金も、予算が組まれ国会・議会の承認を得てからでないと制度化されないものなので、この緊急の事態には対応しきれない。今回の想定外の災害に対しては、融資や助成金など、既存の制度だけでは救えないだろう、そう思った。 そこで、考えたことは「その企業に共感し、応援したいと思う全国の個人(ファン)から小口で出資を集め、再建のための事業資金として使えるようなファンドの仕組みがあれば、被災地の企業がもう一度立ち上がることができるのではないか」というアイデアである。そのアイデアをツイッターに投稿したところ、同じようなことを考えていた、ファイブブリッジのメンバー数名が即座に反応したため、すぐ連絡を取り合い、その実現に向けての可能性についての話し合いを行った。そんな中、メンバーの一人が、ミュージックセキュリティーズ(以下、MS社。)という、小口投資で実績のあるファンド運営会社と、偶然にもツイッターを通じてつながることができた。MS社も、小口投資の仕組み・ノウハウで被災した中小企業の復興支援を行いたいと考えていたため、お互いすぐに共感し、一緒に動き出すこととなった。

まずは、この仕組みを使ってファンドを立ち上げよう、という事業者がいなければ始まらないので、個人的に大ファンでつながりも深く、ぜひ応援したいと願う企業数社に連絡し、4月中旬にMS社の方をお連れした。企業(経営者)からは、この仕組みに即座に賛同を得たので、急ぎファンド募集開始に向けて準備が進み、4月24日に気仙沼で6社(宮城県5社、岩手県1社)による記者会見を行い、翌25日から募集開始を行うことができた。

被災地応援ファンドの仕組み・特徴

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セキュリテ被災地応援ファンドのサイト。複数社は既に必要口数に到達している。

セキュリテ被災地応援ファンドは、一口1万円から個人で参加でき、自分が応援したい被災企業に投資という形で応援できる仕組みである(http://oen.securite.jp/)。今回のファンドの仕組みは、出資金と応援金を組み合わせているところが今までになかった特徴となっている。つまり、1万円の内訳は、出資金5千円と応援金(寄付)5千円で、半分は返済が不要なお金である(但し、一口あたり500円の運営手数料が発生する)。なお、当ファンドのスキームはMS社が提供しており、各事業者がMS社のプラットフォームを使い、WEBを通じて匿名組合契約による出資を募るという形態になっている。

★NPO法人ファイブブリッジは、メンバーが有志として当ファンドの構築・普及に対して側面的なサポートを行っているが、組織として関与しているわけではない。ファイブブリッジを通じたゆるやかな人のつながりと、様々なアイデアを相互的ににやりとりする土壌があったからこそ、当ファンドが素早く立ち上がった。

当ファンドの特徴として、まず、出資者にとしては、自分で投資先を選ぶことができること。自分が出したお金がどう使われ、どう復興に進んでいるかを継続的に知ることができること。そして、工場設立や商品出荷が始まった際などに出資者だけの特典が得られることが挙げられる。逆に、企業としては、融資や助成金とは違う形で必要な事業資金を得られること。それと同時に自社に共感し、応援したいという多くの出資者(ファン)を得られることが挙げられる。この出資者は、顧客であり、応援者でもあるため、商品購入や口コミなどの商品PRという点でも応援が得られることが大きな特徴である。

被災地応援ファンドの募集状況

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気仙沼で行われたプレス発表会にて(4月24日)。ファンド参加事業者と応援者が再建を誓い、こぶしに力を入れる。

ファンドの参加企業は、4月末に募集開始した6社に加え、5月末には2社、6月末には3社が新たに募集開始を行っている(7月末現在)。業種は、水産加工を中心に、その他、製麺、コーヒーショップ、鮮魚店、酒蔵など多岐に及んでいる。エリアも現状は宮城県の企業が多いが、8月末には岩手県の企業が4社新たに募集開始し、今後広く被災地に広がっていく予定である。(基本的には、毎月末に新たなファンドが募集開始になる)

また、ファンドの集まり状況については、1社が募集開始後、2週間程度で募集口数(1千万円)が集まったほか、いくつかのファンドでも間もなく募集口数が集まる見込みである。当ファンドの取り組みは、義援金などとは違い、「顔が見える支援」「個人が継続的に応援できる支援」として他に類似がなかったため、募集開始当初より複数のメディアで取り上げられており、少しずつ全国に広まりを見せているところであるが、今後ますます多くの全国の個人にこの被災地応援の仕組みを知ってもらうことで、できる限り多くの被災企業の再建への一助となることを期待したい。

ファンド事業者の反応

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津波により店舗が流出した、気仙沼・アンカーコーヒー

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地域の復興はまずは自社からと訴える、アンカーコーヒー(気仙沼市)小野寺氏と八木澤商店(陸前高田市)河野氏

いずれの企業も、最初、当ファンドの話を持ちかけた際は、半信半疑で、いわゆる「ファンドといえば、ハゲタカ」という負のイメージがあったことは間違いない。ただ、以前からつながりのあった私からの紹介ということで、「怪しい話ではないはず、まず話を聞いてみよう」と思っていただけた。実際にMS社と会って話を聞いてもらったところ、その仕組みの良さをすぐに理解してもらい、賛同が得ることができた。特に、企業が共感したポイントは、事業資金が集まるということ以上に、自社を応援してくれるファンが獲得できるということであった。地場の中小企業はいずれも少なからず地域に根ざして事業を行ってきたため、取引先や顧客の多数が被災し、先の売上見込みが立たないのが実情である。そのような中、既存の顧客はもちろん、全国の全く見知らぬ個人が自社に出資をしてくれたことは、この上なく心強いことであり、その多くの出資者とのつながりが復興に向かって立ち上がる後押しになっている、という声をもらっている。

被災地の現場からファイブブリッジメンバーが期待すること

会社と自宅の間に、もうひとつのあなたの居場所を。
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日本を元気に、東北・宮城を元気に。志をひとつにするファイブブリッジメンバー

ファイブブリッジは、会社や組織の枠組みを超えた、個人のつながりを中心としたコミュニティースペースだ。震災時はこうした人と人のつながりの中からの支え合いがスムーズに機能し、支え合うことができた。ビジネスだけのつながりでは、地域で生活する人々との相互扶助の精神は生まれにくい。個人個人の生活圏の中で最低ひとつでも、こうした地域コミュニティーに参加することの重要性を、地域防災の観点からも強く訴えたい。みなさんにもすぐに簡単にできることは、「会社と自宅の間に、もうひとつのあなたの居場所づくり」をすることだ。

さらに、それぞれの人が生きる時間の中で約2割の時間を使い、「地域にとってちょっといいこと」に取り組んでもらいたい。それにより、自分の人生も豊かになり、外部活動で得られた人脈やプロジェクトを財産に、企業人として地域の生活者としても、各人の存在理由(レゾンデートル)の幅も大きく広がっていくことだろう。

様々なモノ・コト・ヒトが喪失した人の話を現地で聞くと、自分の仕事としてのタスクが、何につながり、誰が助かっているのかを具体的に知ろうとすることが大切だということを痛切に感じる。お金で解決するものも大切だが、人と人の絆で解決する事柄を重視する世の中に変えていきたい。震災前のような生活に戻れず、前に進めない仲間が、私たちの身の周りにはまだまだたくさんいる。地域金融機関・信用金庫等に関わるみなさんの身近な地域、身近な人に対する熱い愛情と、その行動ひとつひとつが、真に豊かな日本になり得るはじめの一歩だと思うのだ。

共同執筆/
NPO法人ファイブブリッジ理事長 畠山 茂陽(河北新報社勤務)
NPO法人ファイブブリッジ副理事長兼事務局長 山田 康人(宮城県庁勤務)
NPO法人ファイブブリッジ運営委員 漆田 義孝(WEBアドバイザー)

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